硬質アルマイトとは

硬質アルマイトとは?

硬質アルマイトとは一般的なアルマイト処理よりも、硬度・耐久性・耐摩耗性が高い皮膜を形成する処理のことを意味します。その特性を活かし、産業機械や自動車部品の駆動部分など、摺動性のある部品に採用されます。

一般的にはビッカース硬度Hv400以上の特性をもたせる処理を硬質アルマイト処理と呼びます。図面に「硬質アルマイト」と指定されることも多いですが、処理会社によって仕上がりの硬度にばらつきがあるため、具体的な硬度は事前に相談をした方が良いでしょう。

抗菌アルマイト

硬質アルマイトのメリット・デメリット

メリット

  • ・硬度や耐摩耗性の向上

    皮膜の硬度が高く、摩耗や衝撃に強いため、摺動部品や工業分野で活躍します。

    皮膜を厚めにつけ、研磨を行うことで光沢を出したり、研磨量を測ることにも応用できます。

  • ・膜厚、絶縁性

    皮膜を厚くつけることができますので、素材に絶縁性をもたせることにも硬質アルマイト処理が応用されています。

    ただし、膜厚を厚くすればするほど皮膜性能が必ずしも向上するわけではありませんので注意が必要です。

    【当社の膜厚対応実績】
    • ・A7075:40μm
    • ・A5056:100μm
    • ・A5052:60μm
    • ・A6063:50μm
    • ・A2017:10μm
  • ・カラーアルマイト

    ご希望のカラーに染色可能です。ただし処理会社によっては対応ができない色や処理もありますので、事前に担当者との打ち合わせが必要でしょう。

    (※素材や処理環境などの条件によって発色が多少変わることもあります。)

×デメリット

  • ・コストと納期がかかる

    通常のアルマイト処理とは異なる薬液を使用するため、コストが割高になります。

    また、低温の電解質に長時間つけて処理を行うため、通常のアルマイトより納期がかかります。

  • ・処理が難しい素材もある

    A2000系や鋳物、ダイカスト製品へ硬質アルマイト処理を行うには高い技術が必要です。そのため処理会社によっては、受け付けてもらえないこともあります。

    ※弊社ではA2000系、ADC10、ADC12、AC類などの様々な材質での処理実績があります。

  • ・処理が難しい形状がある

    製品に高電圧が流れることで溶解・穴開きが発生してしまうため、基本的に薄い板状の素材には処理ができません。

    ※0.03mm程度のアルミ箔にてテスト実績による)

硬質アルマイトと通常のアルマイトの違いは?

一番の違いは皮膜の硬度です。通常のアルマイトは皮膜の硬度がHv200前後になりますが、硬質アルマイトの場合はHv400~Hv500程度まで硬度を上げることができます。(A5056,A5052材などで)

硬質アルマイト処理は低温の電解質中に製品を入れ、高電圧をかけながら時間をかけて処理をするため、コスト面では高くなります。一般的には通常アルマイト処理の2倍以上の費用がかかりますが、製品の材質・大きさ・膜厚で変動します。

右の表に硬質アルマイトと通常のアルマイトの比較をまとめました。

通常 硬質アルマイト処理
硬度 Hv200前後の皮膜が多い Hv400以上の皮膜
寸法変化 膜厚の1/2が程度が増加 膜厚の1/2が程度が増加
色合い 通常はシルバー調になる
カラーアルマイトが可能
グレーから褐色調
カラーアルマイトが可能
膜厚 5~20ミクロン
使用条件に応じた調整可能
20~70ミクロン
使用条件に応じた調整可能
主な用途 光学部品、建材、工業部品外観部品 産業機械、自動車部品など摺動部品
処理工程 アルミニウムを溶液中に浸し、陽極(+極)で電解処理することで人工的に酸化皮膜を生成 アルミニウムを低温な電解溶液に浸し、高電圧で電解処理することで、硬度の高い皮膜を生成

硬質アルマイト処理に適した素材

硬質アルマイト処理には主に
・A5000系
・A6000系
のアルミが用いられます。
A2000系などの素材にも処理自体は可能ですが、アルミニウム以外の異種金属の混合割合が高くなるほどアルマイト皮膜の形成を阻害してしまいます。そのため、良質な皮膜を形成するために適した材質はA5000系・A6000系となります。

硬質アルマイト処理の用途

前述の通り、硬質アルマイト処理の一番の特徴は皮膜の硬度です。そのため、産業機械の中で部品と部品がこすれ合う箇所やロボット部品、ホビー、吊り具、自動車・バイクなど、あらゆる業界で使用されています。

摺動部の部品

摺動部の部品

産業ロボット

産業ロボット

釣具

釣具

自転車・バイク

自転車・バイク

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